菅総理退陣表明後6日間で日経平均株価1,838円33銭上昇
自民党総裁任期中に衆議院解散総選挙が懸念されていたが、2021年9月3日正午の自民党役員会で菅義偉首相が自民党総裁選に立候補しないことを表明、首相を退任することが明らかになり永田町も兜町も大きな衝撃が走りました。
永田町の動き
永田町では次期総理大臣が誰になるのか取材・推測が駆け巡り、河野太郎 行政改革大臣、下村博文 政調会長、岸田文雄 前政調会長、石破茂 元幹事長など次期首相候補となりそうな政治家の名前が挙げられていた。
兜町の動き
兜町では「菅首相退陣=日本株上昇」の動きが目立った、午後から日経平均先物買い、現物買い、個別銘柄の物色から9月3日の日経平均株価終値は前日比584円60銭高の2万9128円11銭と大幅高で取引を終えた。
さらに翌営業日も531円高と大幅続伸、9月9日は5日ぶりに反落するも菅首相が退陣することを表明した日から日経平均株価は1,838円33銭も短期間で上昇しました。
総理大臣が変わると株価が上がる?
菅首相が退陣して総理大臣が変わるとなぜ株価が上昇するのでしょう?
今回はコロナワクチン、コロナ感染拡大で経済マイナスが長期化しており、これを打破する次期政権の経済対策期待が株価上昇の要因となったと見られています。日経平均株価上昇が急ピッチでスピードが早すぎると言われるが、相場格言の「期待で買って、現実で売る」まで上昇相場が続くと予想されます。
海外投資家が日本株を6,642億円買い越し
9月第一週の投資部門別売買動向では、海外投資家が現物、先物ともに合計6,642億円の買い越しだった。この間の日経平均株価は8月30日から9月3日まで全営業日で日経平均株価が上昇した。
菅首相退陣表明以後の9月6日以降の海外投資家がどれだけ日本株買い越ししているか、統計発表前ではあるが第一週を大きく上回る買い越し金額と容易に想像できる。
証券アナリストが菅首相退陣後の日本株見通し、日経平均株価予想レポートを相次いで発行している。ここでは主要証券会社アナリストレポートから、総理大臣が辞めた後の株式見通し特集をまとめてみた。
菅首相退陣で日本株はどうなる?アナリスト予想まとめ
SMBC日興証券による菅首相辞任後の株式見通しでは、「菅首相辞任」報道の影響として、リスクだった衆院選の前に変化への期待が醸成される点は好材料と指摘。
新総裁は総裁選後に組閣するため、衆議院任期内に衆院選が行われる可能性が低下、ワクチンがより普及した後のタイミングになると想定。
誰が新総裁になろうとも経済政策は肥大化しそうなことから、「衆院選で与党が勝利する可能性は高まった」とみて、日本株は 9月に最悪期を脱し、10~12月に本格上昇と予想しています。
ゴールドマンサックス予想は誰が総裁になっても日本株は一段高
ゴールドマン・サックスの日本株見通しでは、どの候補者が自民党総裁選を勝ったとしても日本株は一段高が見込めると指摘。
候補者によって株式市場の反応は異なるとの見方で、有力候補者3名による発表や政策スタンスから、現時点では河野太郎氏が最もマーケットから好感される可能性が高いと解説。
ここ数日の進展は年末に向けた強気スタンスを一段と強めると考え、TOPIXは年末目標水準2,100ポイントを上振れる可能性が高いと予想。TOPIX目標水準は精査中としながらも、一段のアップサイドを想定しています。
選挙と年末ラリーにも備えたい
みずほ証券による菅首相退陣後の日本株見通しでは、過去の傾向として、9~10月は小幅な動きにとどまり、11~12月は米株よりも堅調になると指摘。
国内ワクチン接種率は欧米諸国のほぼ並んできたことから、今後は経済活動再開期待による出遅れ修正が期待できそうと解説。
自民党総裁選の投開票を皮切りに商いが復調すれば戻り歩調を一段と強めるとみて、「選挙と年末ラリーにも備えたい」との見解を示しています。
銀行株投資に魅力、日本経済正常化へ
ジェフリーズ証券銀行セクターのレポートでは、日本では誰が次期首相になったとしても、新首相の急務は日本経済が正常化して他国市場に追いつくことを支援することで、さらなる財政出動が含まれると指摘。
その結果、イールドカーブにスティープ化のバイアスが生じることから銀行株はレンジ下限で取引されるとみて、与信コストが予想を下回ったことで、3Q以降は資本還元アクティビティが活発化すると解説。
金利と銀行のバリュエーション双方がレンジ下限にあるため、主要銀行銘柄は魅力的と評価し、個別では三菱UFJフィナンシャル・グループをトップピック推奨しています。
日経平均株価は再び3万円台回復の可能性
証券ジャパン日本株見通しでは、新型コロナ対策の不満などから支持率が低かった菅首相の退陣&新政権誕生は、与党にとって衆議院選挙でプラスに働きそうと指摘。
医療体制強化、コロナ禍で厳しい経営環境下にある業界や個人への支援策、社会経済活動回復への諸施策、自然災害に強い国作り、脱炭素政策などに対する期待が高まることなど、日本株に極めてプラスに働く。
徐々に企業収益への上振れ期待が高まってきたタイミングの中で、欧米株と比較した出遅れ感修正に繋がることが想定され、日経平均は再び3万円台回復の可能性が高まってきたと解説。
証券ジャパン参考銘柄として、AGC、富士通、トヨタ自動車、三菱ガス化学、マキタ、村田製作所、マクアケ、弁護士ドットコムを取りあげています。
衆院選挙後は米国株をアンダーパフォームすると予想
みずほ証券テクニカル分析レポートでは、日本の政治要因による海外投資家の買い戻しは今週末のメジャーSQで一旦ピークを超えると指摘。
9月29日ごろの自民党総裁選挙、11月ごろの衆議院選挙まで時間があるだけに政治面の材料だけで買い上がるのは難しいとみて、今後は新型コロナ情勢、米国株、香港ハンセン指数など政治以外の要因で日本株が動く場面が多くなり、これらにも目配りが必要と解説。
来週は今週末に算出される9月SQ値を上値抵抗線に下落しやすくなり、日経平均2万9000円、TOPIX2,000ポイントを挟むもみ合い、来週以降は米国株並みの騰落率になると想定。
9月から10月は日経平均が28,000~30,500円、TOPIXは1,950~2,150ポイントのレンジで推移しそうなことから、押し目買いスタンスが有効と考え、衆院選挙後は米国株をアンダーパフォームすると解説。大きな調整局面は11月以降に後ずれすると分析しています。
過去パターンから野村證券の参考銘柄
野村證券による見通しでは、日本株の第1四半期は好決算、売上高はコロナ前を下回るも営業利益はそれを上回ったと評価。
収益性改善・需要回復共にコンセンサス予想を上回る勢いとみて、会社予想据え置き後の株価リターンの悪化は一時的、その後回復する傾向があると解説。
想定を上回る原材料高と新型コロナ変異株の感染拡大が悪材料としながらも、悪材料は収益性改善でカバー可能、業績大幅回復シナリオを継続して、過去250営業日リターンが高く、会社予想を据え置いた後の株価リターンがTOPIXを下回っている銘柄は、過去パターンによれば失地回復が見込めると想定。
当該銘柄として、日本電産、コーエーテクモ、日東電工、大東建託、富士電機、富士通、パナソニック、コーセー、栗田工業、日立製作所、ローム、アイシン、マツダ、ニフコ、豊田通商、JSR、双日、王子HD、住友化学、丸紅、イビデン、いすゞ自動車、トヨタ自動車、リコー、伊藤忠商事、シャープ、博報堂DY、旭化成、デンカ、シスメックス、全国保証、三井不動産、T&Dホールディングス、東京建物、日本郵政、東急、オープンハウス、ゼンショーHD、日本通運を紹介しています。
外国人投資家による日本株ロングオンリーの買戻し
みずほ証券日経平均見通しでは、東京都の新規感染者数は8月23日から前週比を下回っている中、日経平均は8月20日に底入れしたことから、政治動向よりも東京都の新規感染者数の増減を見ながらトレードしている投資家もいると指摘。
日経平均株価が一時2万7000円割れとなった8月20日に、日経平均とNYダウの差は8,107ポイントと過去最大に拡大したため、日経平均を買い戻す理由を求めていた投資家が多かったと解説。
政治やコロナ状況が良い方向に向かえば、ロングオンリーの外国人投資家の日本株の買い戻しが期待できると予想しています。
コメント