ロシア・ウクライナ侵攻と日本株見通し過去の戦争開始に株式市場は上昇

ロシア・ウクライナ地図 日本株投資戦略

世界の株式市場はロシアがウクライナ侵攻するリスクを警戒して下落した。日本株は1月5日に2万9388円の高値から、2月24日に2万5775円まで3613円も下落した。

ロシアがウクライナと開戦した場合のリスクを考え、投資家はリスク回避のポジション整理、保有株の売却や安全資産への資金シフト、戦争が始まると値上がりする商品コモディティ投資、原油関連株への買いポジションを高めた様子。

証券会社アナリストが予想する日本株見通しと証券会社おすすめ銘柄、ロシア・ウクライナ情勢が日本に与える影響、株式市場に与える影響などをまとめた。

野村證券ロシアリスクレポート

野村證券が作成したロシアリスクのレポートでは、日本の対ロシア輸出は、自動車(3.3%)、同部分品(2.8%)があり、ゴム製品(5.3%)やカーオーディオとみられる音響機器(3.5%)など関連製品も比較的ロシア向け輸出のシェアが高いと指摘。

建設用・鉱山用機械(4.4%)、荷役機械(3.5%)もロシア依存度がやや高いものの、輸出製品によっては2014年のクリミア危機を契機にロシア向けが大きく低下しているものも多く、仮定した「潜在的減少リスク」を試算しても最大2%前後にとどまると解説。

半導体等電子部品、半導体製造装置はいずれも対ロシア輸出がほとんどなく、競合関係にあるロシア企業の輸出制約は日本企業に有利(鉄鋼製品)、ロシアからの供給が減退しパルプ市況が高騰した場合に業績にプラス影響(製紙)、穀物市況が上昇すれば顧客の業績がよくなり需要にプラス(農薬)、燃料価格上昇は省燃費技術に強い企業に追い風(自動車・自動車部品)などポジティブな側面を紹介しています。

モルガンスタンレーINPEXの買い推奨

モルガンスタンレー証券の石油上流セクターレポートでは、地政学リスクが高まり原油市場は大きく上昇したと指摘。

地政学リスクが解消されたとしても非常に低水準なグローバルの原油在庫、制限された供給力から、原油需給はタイト感が継続し、原油市況は高止まりすると予想。

今後は保有資産の原油・ガス比率等、個別要因もディスカウント縮小へのひとつの鍵になるとみて、個別では、INPEXの買い推奨を継続しています。

戦争と世界の株価、開戦と同時に株高へ

みずほ証券の見通しでは、ウクライナ紛争が短期で終わるのか泥沼化するかは現時点では見通せないものの、米国株式市場は過去3つの戦争(湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争)の開戦時と同様に上昇に転じたと指摘。

日本株は足元のリスクオフモードが行き過ぎている面もあるため、2022年3月末の日経平均予想を27000円にとどめ、2023年3月末予想を32000円に設定。

投資テーマとして、ウクライナ情勢に加え、台湾海峡の緊張が高まる可能性もあるとみて、INPEX、住友金属鉱山、三井物産、三菱重工など資源関連株や防衛関連株が評価されると予想しています。

原油価格1バレル=120ドルを超えると減益懸念

東海東京証券の見通しでは、目先的には日経平均株価は一目均衡表の基準線程度までの自律反発は可能と指摘。

それでも、日本の株式市場が底堅さを取り戻すには日米景気の先行きの安定感を取り戻すことが必要と考え、当面は下値不安を払しょくすることは困難と予想。

日本株の安定には3月15~16日の米国FOMCで景気動向に配慮した金融政策を示せるかどうかが待たれるとして、ウクライナ問題の緊張が長引いた場合、エネルギー価格の上昇を通じて企業業績を圧迫する可能性があると解説。

原油価格が20%上昇した場合、短期的に企業収益を1.94%押し下げる影響が発生すると試算、1バレル=120ドルを超えてくると減益懸念が高まる可能性もあるため、留意が必要とコメントしています。

ロシア関連の注目株-クレディスイスアナリスト

医薬品セクターのレポートでは、ウクライナ情勢を受け、ロシア圏向けの売上がある銘柄は武田薬品&アステラス製薬の2社で、両社とも売上規模は小さいと推測。

サワイグループHDはジェネリックの原薬をウクライナから仕入れているものの、依存度は低いとみて、3月末までを視野に入れると、自社株買いの継続や配当取りなどディフェンシブ性が重視されると解説。

クレディスイス証券は注目銘柄として、武田薬品、アステラス製薬、小野薬品を紹介しています。

ウクライナ情勢 欧州へのガスパイプライン

立花証券の見通しでは、プーチン大統領はウクライナに対して強硬な態度を崩さないものの、欧州へのガス・パイプライン停止など不満を世界経済にぶつけるような意図はあまりなく、経済重視の姿勢が変わらないように見えることはまだ救いと指摘。

当面は、来期も好業績が見込める成長銘柄や割安感のある銘柄を丹念に拾う場面と位置付け、日本製鉄など値上げを実現している企業も注目できそうと解説。

立花証券は注目銘柄として、日本工営と北川精機をピックアップしています。

NORD STREAM2

業績上方修正・割安感の強い銘柄3社

SMBC日興証券住宅セクターのレポートでは、住宅各社の収益ピークアウトが懸念されているものの、各社とも旺盛な需要を背景に、好調な住宅受注、高単価・高利益率での住宅販売が継続している状況が確認できたと指摘。

大和ハウス、大東建託、飯田グループHD、オープンハウス、カチタスは会社計画上振れで推移しているとみて、販売戸数増、高単価維持、販売コスト抑制などにより、総じて堅調な利益成長が続くと解説。

利益成長ガイダンスや会社計画上方修正などが示され割安感が強い大和ハウス、オープンハウス、飯田グループHDを中心に株価は回復基調に転じると想定。

SMBC日興証券は大和ハウスとカチタスが新中期経営計画発表予定で、総じて前向きな内容が示されると予想しています。

ロシア・ウクライナ問題エネルギー価格や原材料価格上昇

SMBC日興証券の金利と株式見通しでは、日米の長期金利が短期上限に接近している可能性が高く、3月後半以降は年初から下落したクオリティ株がリバウンドする機会になると指摘。

それでも、インフレ高進が止まるシナリオが見えていないことや、5~6月のFOMCで量的緩和が決定される可能性が高いことから、バリュエーションが過度に高い銘柄は避けた方が得策と解説。

業種別では、資源・素材系業種の一部を継続的に保有することが必要と位置付け、ロシア・ウクライナ問題が峠を越えている場合はエネルギー価格や原材料価格の上昇が一巡する可能性もあると予想。

国内経済回復のストーリーも考慮すると、内需業種へ物色が一部移行することもあり得ると想定。3月のターゲットリストには、大和ハウス、電通グループ、JFEホールディングス、JR東海を新規採用しています。

投資テーマ「リオープニング」個別銘柄紹介

オミクロン株の感染拡大が一服するなか、経済のリオープニングが持続的投資テーマとして意識される可能性が高まっていると指摘。

株価が底堅く推移する背景には、インフレ期待の高まりやバリュー株への資金流入があるとみているものの、ダウンサイドリスクが顕在化する場合には株価がネガティブに反応するリスクは高いと考え、業界投資判断を「インライン」を継続。

モルガンスタンレー証券アナリストは個別選好順位を、三井不動産>三菱地所>住友不動産>カチタスの順に設定しています。

東海東京調査センターの日本株式見通し

東海東京調査センターの株式見通しでは、バリュー株優位の展開が継続しているものの、TOPIXグロース÷バリュー(相対指数)の75日移動平均線かい離率を見ると、足元-10%近くに達し、過去にバリュー優位からグロース優位に転換した水準近辺にあると指摘。

ウクライナ情勢緊迫化や米金融引き締めに対する警戒感などからグロース株を手掛けづらい局面にあるものの、テクニカル面からそろそろグロース株に反発の兆しも見え始めていると解説。

業績やバリュエーションを考慮した上で「グロース株を仕込んでおくのも一案」とコメントしています。



コメント

タイトルとURLをコピーしました